流転編 BLEACH異世界トリップ夢シリーズ
I was about to do a very bad thing.
その辞令が私の身に下った時、改めて『運命』という物を痛感した。
「浮かない顔してますね? サン」
喜助の実験室を兼用している十二番隊隊長室にお邪魔した途端、そんな事をその部屋の主に言われて苦笑した。
そのままいつもの定位置、部屋の隅にある椅子に腰掛けて、喜助が私の側に寄ってくるのを待つ。
「そんなに顔に、出てたかなぁ……?」
「出てますよ。せっかくあと数日で晴れて隊長になられるのに、そんなに浮かない顔してちゃ駄目ッすよ」
喜助は側に寄ると、私の片腕をとって、その袖の布をめくっていく。
「嬉しくないもの、隊長なんて……私には無理よ」
「アタシよりずっと先に卍解できてた人が何言ってんですか、今までずっと断って来れましたけど、今回のはどうしようもないっす。アタシにも、あなたにもね」
「そうだね……」
採血のための注射器を手にしたまま、軽い言葉で嘆く喜助に、私は息を吐くように同意する。
この身体の検査はもう何百回と行ったけど、それでもまだ治療薬に値する物は出来上がらない。せめて造れる物は一時的に身体を騙すような『栄養剤』だけ……それも喜助にしか造れないような難物だった。
検査だけじゃなく、栄養剤を造るための元手にも私自身の血液を必要とするあたり、とてもマッドサイエンスっぽくって笑えてしまうけど、その効果は抜群だ……誰にも私が病持ちだとバレないのだから。
「……サン」
「ん……何?」
採血が終わった後は、薬の出来上がり待ちなので邪魔にならないように、そのままそこに座り続けて喜助との会話を続ける。これも、いつもの事。
「身体の事、まだ、京楽さんと浮竹さんに言ってないんすか?」
「……うん。一生言うつもりはないよ。ただでさえ十四郎が病で伏せがちなのにさ、私の事でまで心配かけたくない」
私の言葉に、喜助は深くため息を吐く。
「……以前にもお話しましたけど、サンの身体の中には何故かこの世界にはありえない『異物質』が充満してるんです。それは日常生活をするだけでは活性化しません。始解状態の斬魄刀を振り回していてもです。でも、卍解をした途端にそれは活発に動き出す……この世界にはありえない法則で、ありえない方向に動いてアナタの身体を蝕んでいきます」
薬を造るその手の動きは正確なままに、会話出来る喜助の器用さはいつも感嘆するけど、今日の話題は随分と重かった。
「……覚えているよ」
忘れられない。私が異世界の者だと、突き刺して来たあの出来事は。
「なら、どうして……」
「喜助?」
珍しい事もある。あの浦原喜助が言い淀むなんて。
「どうしてこんなに直ぐに栄養剤が必要になるほど卍解してるんすか。あのお二人に言わないなら言わないなりに、サンご自身で身体の事を気遣ってやらないと……。今度、隊長になるんすから、もっと頻度が高くなるかもしれないでしょう?アタシ、こんな気持ちで薬を造り続けるのはタマラナイっす」
「……」
「……酷いっすよ、サンは。騙すならちゃんと騙して下さい。隊長になりたくないのなら、卍解できる事だって周囲に隠しておけば良かったんス。そうすれば身体だって壊れていく事もないじゃないッすか……なのに『誰か』を護ろうとしては卍解して、……そんな事ばかり繰り返して……」
一言も反論できなかった。
その通りだったからだ。
薬をいただいた帰り道に、瞬歩を使って双極の丘へ寄り道した。
ここは滅多な事では人が来ないから、ひとりになりたい時には打ってつけだったのだ。
でも、話し掛ける相手はいる。
「キコウオウ」
封印されたままで、応えはないけれど。
「鳥さんあのね、今度、十番隊の隊長になる事になったよ。……きっと、私の任期は短いと思ってる。私はそう、知っているからね」
まだ出会っていないけれど、近い内に、日番谷くんが現れるだろう。いっその事、私が探しに行くのも良いかもしれない。
喜助が追放されるのがいつなのか、正確な時間を覚えていないけれど、それも必ず来るのだろう。そうなったら薬なしの状態で隊長の椅子に座し続ける事になるのだ。せめて喜助が追放される前までに、日番谷くんを見い出しておかなくては、後々不味いだろう。
そして出来れば、最後の瞬間まで、春水と十四郎に身体の事がばれなければいい。
「ホント、まいっちゃうよね……。ばれたら最後、あの2人は絶対、私を隊長にしちゃった事、後悔し続けそうなんだもの」
隊長にならないように気を付けていた。
喜助にはあんな風に言われてしまったけれど、これでもずっと、私なりに気を付けていたのだ。それでもどうしようもない所まで来て、選りによって拝命した隊が『十番』では……。
空を見上げた。
あの日、地面に転がって見上げた空と、変わらないような空を。
「……それでも、幸せだと言ったら、信じてくれるかな……?」
「浮かない顔してますね? サン」
喜助の実験室を兼用している十二番隊隊長室にお邪魔した途端、そんな事をその部屋の主に言われて苦笑した。
そのままいつもの定位置、部屋の隅にある椅子に腰掛けて、喜助が私の側に寄ってくるのを待つ。
「そんなに顔に、出てたかなぁ……?」
「出てますよ。せっかくあと数日で晴れて隊長になられるのに、そんなに浮かない顔してちゃ駄目ッすよ」
喜助は側に寄ると、私の片腕をとって、その袖の布をめくっていく。
「嬉しくないもの、隊長なんて……私には無理よ」
「アタシよりずっと先に卍解できてた人が何言ってんですか、今までずっと断って来れましたけど、今回のはどうしようもないっす。アタシにも、あなたにもね」
「そうだね……」
採血のための注射器を手にしたまま、軽い言葉で嘆く喜助に、私は息を吐くように同意する。
この身体の検査はもう何百回と行ったけど、それでもまだ治療薬に値する物は出来上がらない。せめて造れる物は一時的に身体を騙すような『栄養剤』だけ……それも喜助にしか造れないような難物だった。
検査だけじゃなく、栄養剤を造るための元手にも私自身の血液を必要とするあたり、とてもマッドサイエンスっぽくって笑えてしまうけど、その効果は抜群だ……誰にも私が病持ちだとバレないのだから。
「……サン」
「ん……何?」
採血が終わった後は、薬の出来上がり待ちなので邪魔にならないように、そのままそこに座り続けて喜助との会話を続ける。これも、いつもの事。
「身体の事、まだ、京楽さんと浮竹さんに言ってないんすか?」
「……うん。一生言うつもりはないよ。ただでさえ十四郎が病で伏せがちなのにさ、私の事でまで心配かけたくない」
私の言葉に、喜助は深くため息を吐く。
「……以前にもお話しましたけど、サンの身体の中には何故かこの世界にはありえない『異物質』が充満してるんです。それは日常生活をするだけでは活性化しません。始解状態の斬魄刀を振り回していてもです。でも、卍解をした途端にそれは活発に動き出す……この世界にはありえない法則で、ありえない方向に動いてアナタの身体を蝕んでいきます」
薬を造るその手の動きは正確なままに、会話出来る喜助の器用さはいつも感嘆するけど、今日の話題は随分と重かった。
「……覚えているよ」
忘れられない。私が異世界の者だと、突き刺して来たあの出来事は。
「なら、どうして……」
「喜助?」
珍しい事もある。あの浦原喜助が言い淀むなんて。
「どうしてこんなに直ぐに栄養剤が必要になるほど卍解してるんすか。あのお二人に言わないなら言わないなりに、サンご自身で身体の事を気遣ってやらないと……。今度、隊長になるんすから、もっと頻度が高くなるかもしれないでしょう?アタシ、こんな気持ちで薬を造り続けるのはタマラナイっす」
「……」
「……酷いっすよ、サンは。騙すならちゃんと騙して下さい。隊長になりたくないのなら、卍解できる事だって周囲に隠しておけば良かったんス。そうすれば身体だって壊れていく事もないじゃないッすか……なのに『誰か』を護ろうとしては卍解して、……そんな事ばかり繰り返して……」
一言も反論できなかった。
その通りだったからだ。
薬をいただいた帰り道に、瞬歩を使って双極の丘へ寄り道した。
ここは滅多な事では人が来ないから、ひとりになりたい時には打ってつけだったのだ。
でも、話し掛ける相手はいる。
「キコウオウ」
封印されたままで、応えはないけれど。
「鳥さんあのね、今度、十番隊の隊長になる事になったよ。……きっと、私の任期は短いと思ってる。私はそう、知っているからね」
まだ出会っていないけれど、近い内に、日番谷くんが現れるだろう。いっその事、私が探しに行くのも良いかもしれない。
喜助が追放されるのがいつなのか、正確な時間を覚えていないけれど、それも必ず来るのだろう。そうなったら薬なしの状態で隊長の椅子に座し続ける事になるのだ。せめて喜助が追放される前までに、日番谷くんを見い出しておかなくては、後々不味いだろう。
そして出来れば、最後の瞬間まで、春水と十四郎に身体の事がばれなければいい。
「ホント、まいっちゃうよね……。ばれたら最後、あの2人は絶対、私を隊長にしちゃった事、後悔し続けそうなんだもの」
隊長にならないように気を付けていた。
喜助にはあんな風に言われてしまったけれど、これでもずっと、私なりに気を付けていたのだ。それでもどうしようもない所まで来て、選りによって拝命した隊が『十番』では……。
空を見上げた。
あの日、地面に転がって見上げた空と、変わらないような空を。
「……それでも、幸せだと言ったら、信じてくれるかな……?」
