流転編 BLEACH異世界トリップ夢シリーズ
knock into novice 02
午後になってお昼を食べ終えた私は、十一の隊舎の門前に行く。
つい先日、『前任の隊長の隊葬』という大掛かりな式を行なった隊舎。血気盛んな隊員が多い事で有名な十一番隊でも、今はひっそりと静まり返っていた。
正々堂々とした勝負の結果だとしても、隊長の死去という事がその隊の隊員にとってどれだけ重いものなのか、その様は伝えてくる。
多分、剣八とやちるちゃんは、まだこの十一番隊に馴染んでいない。
私が読んで知っている『更木隊』になるのは、これからなんだろうね。
静まり返った隊舎に色んな感慨が湧いてくるけど、ここで立ち止まる訳にもいかないから、ひとつ息を吐いてから声を掛け、その隊舎に入っていく。仲良くしている隊舎ならともかく、十一とは今まで事務的な事でしか関わってこなかったから、最低限の礼儀は必須項目だろう。
「こんにちはー」
ゆるやかに挨拶をかけながら、十一の執務室にお邪魔する。
練習用の白紙を床一面に散らかして、やちるちゃんが『お絵書き』をしている。その奥にある隊長用の椅子にどっかりと座り、『何もしていない』剣八は私を見て億劫そうに眉をしかめる。
うわ、たったコレだけで霊圧上げる?
これでは、平隊員とはマトモに挨拶さえ交わせないのではないだろうか?
今の剣八はあの特徴的な髪形もしていない、そして霊圧を抑制する眼帯も付けていない。
つまり『機嫌によって上下する巨大な霊圧を垂れ流し状態』って事で。
前途多難だなぁ。
内心の苦笑を隠したまま、私は霊圧に圧倒されることなく平然と過ごす。多分、剣八はこの時点から本能的に、私の力を見定め始めているのだろう。
文字を教えに来ただけなのに、まるで戦場に立つような気分になってきて、笑えてしまう。
「一番隊副隊長のです。本日から十一番隊隊長 更木剣八殿、同副隊長 草鹿やちる殿に『筆記』をお教えに参りました。これからよろしくお願いします」
笑いながら挨拶をした私を見て、剣八がおもしろそうに目を細めた。
「、だっけ?」
やちるちゃんが床に寝転びながら、入口で挨拶をした私を見上げて首をかしげる。
「覚えててくれたんだ、やちるちゃん」
あの緊急時にほんの少しだけ、言葉を交わしただけだったのに。なんだか嬉しくなってしまうよ。
「うん、剣ちゃんの戦いを見やすい所に連れていってくれたし、あたしの名前を『良い名前』って言ってくれたし。それに、剣ちゃんの刀を受けとめてたしね!」
やちるちゃんがニコニコと笑いながら言った言葉を聞いて、私は内心で絶叫した。
一番最後の言葉は言わないで欲しかったー!
な、なんだか剣八が、増々おもしろそうに目を細めて、獲物を見つけたような顔で笑っているんだけど?!
「いや、あの……あの時の更木隊長のお力は、まだ五分も出されていなかったでしょう? だから私でも、あんなに簡単に受け止める事ができたんですよ」
しどろもどろになってしまったけれど、何とか言い訳をする。
「ハッ、五分以下でも受け止めれねぇ奴はいるぜ。って言ったか、それなりに強ぇんだろ」
「……まぁ、一応は副隊長ですから」
物騒な気配を収めてくれたのを見て取ってから、ゆるく微笑んで応えていた。
『一応は』に力がこもらないように、さらりと言い流すのがポイント。
実は隊長への推薦を何度も頂いているほど私の戦闘能力が高いと知られたら、戦闘凶と言っても過言ではない剣八にとって、私の存在は猫にマタタビ。すなわち、それは最後の切り札として使う情報であって、一番始めに知らせるべきじゃない。
筆記学習のご褒美に『私との仕合』を考えていても、それはいよいよ切羽詰まった時の手段にしたい。
まずは少しずつ、追々と。
「では、顔合わせのご挨拶も済みましたし。更木隊長、やちるちゃん、筆記の学習を始めましょうか」
護廷十三隊という組織に、ふたりが馴染んでくれるように、歩み寄ろう。
意外な事に、ふたりとも、それなりに文字の練習をしてくれた。
あの剣八とやちるちゃんなんだから、少しずつ休憩を挟んで1刻(2時間)くらい教える事が出来たら快挙だと考えていたんだけど、実際には1刻半(3時間)も学んでくれた。
さすがに、やちるちゃんはもう耐えられなくなったのか、うずうずと落ち着かなくなってきたし、剣八の霊圧も戦闘状態ほどではないけれど、不機嫌そうに上がる所まで上がってしまっている。
このまま続けたら、霊圧で壁が震動しそうだね……。
あまり強要させて次の日から「もう勉強するの嫌だ」と言われないためにも、これくらいで切り上げるのが得策かな。
開いていた教本をゆっくりと閉じて、ふたりに微笑みかける。
「……本日は、ここまでにしま…」
「やったーっ、終わったー!!!」
私の言葉が終わる前に、やちるちゃんが喝采をあげるように、小さな身体を伸ばして叫んだ。
うわぁ……、本当に嫌だったんだね。
よく我慢して勉強につき合ってくれたなぁ。
その横では剣八が「やれやれ」とでも言いたげに息を吐いて、二の腕を回しながら首から肩の筋肉をほぐしていた。
「おふたりとも、ご苦労様です」
微笑ましい姿にくすくすと笑いを誘われながら、散らかった紙や筆を片付けていると、剣八が嫌そうに眉根を寄せた。
「ソレは止めろ」
「え?何がでしょう?」
何か不味い事したかな?と振り返ってみる。
けど、特に何もしてない…よね?
「てめぇ、俺とやちるで言葉変えてんだろ。それを止めろ」
「…え……」
告げられた言葉に、ぽかん、と剣八を見返してしまう。そして剣八のすぐ横でやちるちゃんが頷くのが視界に入ると、久しく覚えのない、心地の良いくすぐったさを覚えた。
『と、距離ができるみたいで嫌だよ』
『俺は確かに隊長になったが、こんな事は望んでいない』
私が、執務中は序列に習った言葉遣いをする事に、今更、文句を付ける人なんて、春水と十四郎くらいだ。惣右介君や烈ちゃんも、隊長に就任し始めの頃は急に敬語になってしまった私に何か言いたそうだったけど、執務外や任務に就いていない時や、周囲に親しい人しかいない場合はそれまで通りに話す私を知って、早くに諦めた。
あ、そうか。
「執務中はダメですけど、それ以外は普通に話しますよ」
妥協案を提示してみれば。
「なんだそりゃ、めんどくせぇ」
一刀両断にされてしまった……。
そこをなんとか、と頼み込んだ瞬間、限界だっただろう霊圧が跳ね上がって、予想通りに壁が震動する。
失敗した、と苦く思う。
ここまで強くなってしまったら、霊圧探査の苦手な平隊員にも伝わってしまうだろう。
早く霊圧を抑えてもらわなくてはと思うけど、言葉遣いは私にとって、執務中や任務中というのは卍解の機会が巡ってくるほどの『危険な日常』だと警鐘するための一種の予防線だから。
どうしても、譲れなくて。
『親しい人しか周囲に居ない時はくだけた話し方にする』と決着するまで、壁がビリビリと霊圧によって震動し続けてしまった。
失敗した、と苦く思う。
この日、執務室から退出し、十一の敷地外に出るまでの間、すれ違った十一の隊員達は皆一様に、先代を殺した霊圧が発せられていたその方角を、忌々しいものや恐ろしいものを見遣るように、遠巻きに眺めていた。
十一の敷地外に出た瞬間、溢れた溜め息は深かった。
大事な人の喪失を、簡単に受け入れる事など出来はしない。
歩きながら、当たり前の言葉が浮かんできた。
剣八とやちるちゃんは、すぐに受け入れられるカタチでの就任ではなかった。
先は、長い。
だけど私は、贔屓してると自覚できるほどに、剣八とやちるちゃんが早く十一に受け入れられる事を望んでいる。
血を流し過ぎるのは好きじゃないけど、己の気持ちに馬鹿正直に生きている彼等の姿は、読んでいる時、大好きだった。
やっと出会えて、嬉しかった。
文字を知らないと聞いて驚いたけど、教える事が…手助けになれる事だと思えば嬉しくて、楽しもうとさえ思っていたのに。
手助けどころか、逆に。
どんどん落ち込みそうな時に、ふと気が付けば、八の敷地内に入っている。
思わず、歩みが止まる。
近くに春水の霊圧を感じる。
ほんの少し、このまま、それを感じて、落ち着きたくなったから、目を閉じて深呼吸。
「、どうしたの」
「……春水、なんで」
霊圧を感じていても、こちらに来るとは思っていなかったから、驚いた。
「時々は、会いにいくって言ったでしょ? 今は帰りかな。近くに来てたのが分かってから、鳩羽が立ち止まったのが気になって来たんだよ」
へらりと笑って話すその言葉に笑いを誘われる。
けど。
「と、時々って今日は……初日だよ?」
そう話しながら、ちゃんと笑えてないって感じてしまった。
春水はそんな私に苦笑して、手を差し出す。
「でも、来て正解だったでしょ」
きっと色々と悟られてしまったなぁ…と、悔しいような安堵するような、微妙な気持ちになったけど。
「……うん、正解。来てくれて、ありがとう」
差し出された手を素直にとって、私は春水の大きな身体にぎゅうっと抱きついた。
「…ちょっとだけ、春水で充電させて」
甘えさせて欲しくて、気持ちだけ先走って、変な言葉になっちゃったけど。
「えぇと…、いつから伝令神機になっちゃったの。しかもボクで充電?」
軽口で乗って来てくれる春水に、こわばっていた先程までの気持ちが溶けていくようで、柔らかく息を吐いて。
「……十四郎で充電してきて良いなら行くけど?」
「ごめん、ボクで充電して」
即答してきた声と同時に、優しく抱きしめ返される。いつもは飄々とした春水が、私を元気づけるためにわざわざ焼きもちを焼いていますと伝えるように、拗ねたような幼い口調になって、大きな身体を丸めてぎゅっとすり寄ってくるのを感じると、なんだか胸がいっぱいになって。
声に出さなかったけれど、今度はちゃんと、笑う事ができた。
「…ありがとう、春水」
また、がんばれる。
そう、思って。
私は春水に抱きついたまま、その顔を見上げて微笑んだ。
つい先日、『前任の隊長の隊葬』という大掛かりな式を行なった隊舎。血気盛んな隊員が多い事で有名な十一番隊でも、今はひっそりと静まり返っていた。
正々堂々とした勝負の結果だとしても、隊長の死去という事がその隊の隊員にとってどれだけ重いものなのか、その様は伝えてくる。
多分、剣八とやちるちゃんは、まだこの十一番隊に馴染んでいない。
私が読んで知っている『更木隊』になるのは、これからなんだろうね。
静まり返った隊舎に色んな感慨が湧いてくるけど、ここで立ち止まる訳にもいかないから、ひとつ息を吐いてから声を掛け、その隊舎に入っていく。仲良くしている隊舎ならともかく、十一とは今まで事務的な事でしか関わってこなかったから、最低限の礼儀は必須項目だろう。
「こんにちはー」
ゆるやかに挨拶をかけながら、十一の執務室にお邪魔する。
練習用の白紙を床一面に散らかして、やちるちゃんが『お絵書き』をしている。その奥にある隊長用の椅子にどっかりと座り、『何もしていない』剣八は私を見て億劫そうに眉をしかめる。
うわ、たったコレだけで霊圧上げる?
これでは、平隊員とはマトモに挨拶さえ交わせないのではないだろうか?
今の剣八はあの特徴的な髪形もしていない、そして霊圧を抑制する眼帯も付けていない。
つまり『機嫌によって上下する巨大な霊圧を垂れ流し状態』って事で。
前途多難だなぁ。
内心の苦笑を隠したまま、私は霊圧に圧倒されることなく平然と過ごす。多分、剣八はこの時点から本能的に、私の力を見定め始めているのだろう。
文字を教えに来ただけなのに、まるで戦場に立つような気分になってきて、笑えてしまう。
「一番隊副隊長のです。本日から十一番隊隊長 更木剣八殿、同副隊長 草鹿やちる殿に『筆記』をお教えに参りました。これからよろしくお願いします」
笑いながら挨拶をした私を見て、剣八がおもしろそうに目を細めた。
「、だっけ?」
やちるちゃんが床に寝転びながら、入口で挨拶をした私を見上げて首をかしげる。
「覚えててくれたんだ、やちるちゃん」
あの緊急時にほんの少しだけ、言葉を交わしただけだったのに。なんだか嬉しくなってしまうよ。
「うん、剣ちゃんの戦いを見やすい所に連れていってくれたし、あたしの名前を『良い名前』って言ってくれたし。それに、剣ちゃんの刀を受けとめてたしね!」
やちるちゃんがニコニコと笑いながら言った言葉を聞いて、私は内心で絶叫した。
一番最後の言葉は言わないで欲しかったー!
な、なんだか剣八が、増々おもしろそうに目を細めて、獲物を見つけたような顔で笑っているんだけど?!
「いや、あの……あの時の更木隊長のお力は、まだ五分も出されていなかったでしょう? だから私でも、あんなに簡単に受け止める事ができたんですよ」
しどろもどろになってしまったけれど、何とか言い訳をする。
「ハッ、五分以下でも受け止めれねぇ奴はいるぜ。って言ったか、それなりに強ぇんだろ」
「……まぁ、一応は副隊長ですから」
物騒な気配を収めてくれたのを見て取ってから、ゆるく微笑んで応えていた。
『一応は』に力がこもらないように、さらりと言い流すのがポイント。
実は隊長への推薦を何度も頂いているほど私の戦闘能力が高いと知られたら、戦闘凶と言っても過言ではない剣八にとって、私の存在は猫にマタタビ。すなわち、それは最後の切り札として使う情報であって、一番始めに知らせるべきじゃない。
筆記学習のご褒美に『私との仕合』を考えていても、それはいよいよ切羽詰まった時の手段にしたい。
まずは少しずつ、追々と。
「では、顔合わせのご挨拶も済みましたし。更木隊長、やちるちゃん、筆記の学習を始めましょうか」
護廷十三隊という組織に、ふたりが馴染んでくれるように、歩み寄ろう。
意外な事に、ふたりとも、それなりに文字の練習をしてくれた。
あの剣八とやちるちゃんなんだから、少しずつ休憩を挟んで1刻(2時間)くらい教える事が出来たら快挙だと考えていたんだけど、実際には1刻半(3時間)も学んでくれた。
さすがに、やちるちゃんはもう耐えられなくなったのか、うずうずと落ち着かなくなってきたし、剣八の霊圧も戦闘状態ほどではないけれど、不機嫌そうに上がる所まで上がってしまっている。
このまま続けたら、霊圧で壁が震動しそうだね……。
あまり強要させて次の日から「もう勉強するの嫌だ」と言われないためにも、これくらいで切り上げるのが得策かな。
開いていた教本をゆっくりと閉じて、ふたりに微笑みかける。
「……本日は、ここまでにしま…」
「やったーっ、終わったー!!!」
私の言葉が終わる前に、やちるちゃんが喝采をあげるように、小さな身体を伸ばして叫んだ。
うわぁ……、本当に嫌だったんだね。
よく我慢して勉強につき合ってくれたなぁ。
その横では剣八が「やれやれ」とでも言いたげに息を吐いて、二の腕を回しながら首から肩の筋肉をほぐしていた。
「おふたりとも、ご苦労様です」
微笑ましい姿にくすくすと笑いを誘われながら、散らかった紙や筆を片付けていると、剣八が嫌そうに眉根を寄せた。
「ソレは止めろ」
「え?何がでしょう?」
何か不味い事したかな?と振り返ってみる。
けど、特に何もしてない…よね?
「てめぇ、俺とやちるで言葉変えてんだろ。それを止めろ」
「…え……」
告げられた言葉に、ぽかん、と剣八を見返してしまう。そして剣八のすぐ横でやちるちゃんが頷くのが視界に入ると、久しく覚えのない、心地の良いくすぐったさを覚えた。
『と、距離ができるみたいで嫌だよ』
『俺は確かに隊長になったが、こんな事は望んでいない』
私が、執務中は序列に習った言葉遣いをする事に、今更、文句を付ける人なんて、春水と十四郎くらいだ。惣右介君や烈ちゃんも、隊長に就任し始めの頃は急に敬語になってしまった私に何か言いたそうだったけど、執務外や任務に就いていない時や、周囲に親しい人しかいない場合はそれまで通りに話す私を知って、早くに諦めた。
あ、そうか。
「執務中はダメですけど、それ以外は普通に話しますよ」
妥協案を提示してみれば。
「なんだそりゃ、めんどくせぇ」
一刀両断にされてしまった……。
そこをなんとか、と頼み込んだ瞬間、限界だっただろう霊圧が跳ね上がって、予想通りに壁が震動する。
失敗した、と苦く思う。
ここまで強くなってしまったら、霊圧探査の苦手な平隊員にも伝わってしまうだろう。
早く霊圧を抑えてもらわなくてはと思うけど、言葉遣いは私にとって、執務中や任務中というのは卍解の機会が巡ってくるほどの『危険な日常』だと警鐘するための一種の予防線だから。
どうしても、譲れなくて。
『親しい人しか周囲に居ない時はくだけた話し方にする』と決着するまで、壁がビリビリと霊圧によって震動し続けてしまった。
失敗した、と苦く思う。
この日、執務室から退出し、十一の敷地外に出るまでの間、すれ違った十一の隊員達は皆一様に、先代を殺した霊圧が発せられていたその方角を、忌々しいものや恐ろしいものを見遣るように、遠巻きに眺めていた。
十一の敷地外に出た瞬間、溢れた溜め息は深かった。
大事な人の喪失を、簡単に受け入れる事など出来はしない。
歩きながら、当たり前の言葉が浮かんできた。
剣八とやちるちゃんは、すぐに受け入れられるカタチでの就任ではなかった。
先は、長い。
だけど私は、贔屓してると自覚できるほどに、剣八とやちるちゃんが早く十一に受け入れられる事を望んでいる。
血を流し過ぎるのは好きじゃないけど、己の気持ちに馬鹿正直に生きている彼等の姿は、読んでいる時、大好きだった。
やっと出会えて、嬉しかった。
文字を知らないと聞いて驚いたけど、教える事が…手助けになれる事だと思えば嬉しくて、楽しもうとさえ思っていたのに。
手助けどころか、逆に。
どんどん落ち込みそうな時に、ふと気が付けば、八の敷地内に入っている。
思わず、歩みが止まる。
近くに春水の霊圧を感じる。
ほんの少し、このまま、それを感じて、落ち着きたくなったから、目を閉じて深呼吸。
「、どうしたの」
「……春水、なんで」
霊圧を感じていても、こちらに来るとは思っていなかったから、驚いた。
「時々は、会いにいくって言ったでしょ? 今は帰りかな。近くに来てたのが分かってから、鳩羽が立ち止まったのが気になって来たんだよ」
へらりと笑って話すその言葉に笑いを誘われる。
けど。
「と、時々って今日は……初日だよ?」
そう話しながら、ちゃんと笑えてないって感じてしまった。
春水はそんな私に苦笑して、手を差し出す。
「でも、来て正解だったでしょ」
きっと色々と悟られてしまったなぁ…と、悔しいような安堵するような、微妙な気持ちになったけど。
「……うん、正解。来てくれて、ありがとう」
差し出された手を素直にとって、私は春水の大きな身体にぎゅうっと抱きついた。
「…ちょっとだけ、春水で充電させて」
甘えさせて欲しくて、気持ちだけ先走って、変な言葉になっちゃったけど。
「えぇと…、いつから伝令神機になっちゃったの。しかもボクで充電?」
軽口で乗って来てくれる春水に、こわばっていた先程までの気持ちが溶けていくようで、柔らかく息を吐いて。
「……十四郎で充電してきて良いなら行くけど?」
「ごめん、ボクで充電して」
即答してきた声と同時に、優しく抱きしめ返される。いつもは飄々とした春水が、私を元気づけるためにわざわざ焼きもちを焼いていますと伝えるように、拗ねたような幼い口調になって、大きな身体を丸めてぎゅっとすり寄ってくるのを感じると、なんだか胸がいっぱいになって。
声に出さなかったけれど、今度はちゃんと、笑う事ができた。
「…ありがとう、春水」
また、がんばれる。
そう、思って。
私は春水に抱きついたまま、その顔を見上げて微笑んだ。
