現世編 BLEACH異世界トリップ夢シリーズ
Pleasure
ウチの毎朝の光景は激しい。
親父と一護の愛情劇は暴力的に炸裂するし、遊子は忙しく食事を作りながらも家族全員と会話しようとするし、夏梨は一歩引いているように見えて実は家族の言動にめちゃくちゃ神経を使っている……そしてそのツッコミは痛烈だ。
その中で俺はゆったりと食事をするのが日課になっている。
一護みたいに親父とやり合う時もあったし、遊子の調理を手伝う事もあったけど、大体は夏梨の側に座ってゆったりと過ごす……平穏が一番だと思うのは、俺だけじゃないはずだ。
そんな風に朝を迎えるのは学校のある平日だけじゃなく、学校のない休日でも同じだった。
家業が開業医だってのも理由のひとつだけど、基本的に寝坊ができない家なのだ。
家族団欒が第一。
慣れてしまえばどうって事ないが、一護は高校生になったら夜更かしをし始めるし、そうなると辛いだろうなぁって思う。
一護はまだ、中学2年生だ。死神になっていない。
だけど確実に、その時は近付いていた。
「一護、俺はそろそろ出るぞ?」
「待てっ! まだ準備できてねぇ!」
まだ親父とやり合ってたのか?
「けど、チャドって人と待ち合わせしてんだろ?玄関の前でって。なら、とりあえず俺が玄関に出ておいた方が良いんじゃないか?」
ちょっと遅れるって説明できるし、ひとりきりで待たすのは悪い。
まぁ、あのチャドならひとりでも一護の事を待ちそうだけど……。
「……悪い、頼む」
「謝るなよ、どーせ親父のせいだろ。まぁ、あんまり待たすのも駄目だからな。早くしろよー」
「あぁ、なるべく早くする」
そう言った一護の背後には、すでに親父の影が忍んできている。
時間、かかりそうだなぁ……と俺は苦笑した。
一護が数日前に、チャドっていう友達が出来たと話してくれた時、俺は凄く嬉しかった。
俺と一護は年子だから、一護が中学に入って一年間、家の中の一護しか見れなかった。
一年遅れて俺も同じ中学に入学してから、学校内外での噂に上る『喧嘩の強い馬芝中の黒崎一護』の顔や、髪の色に文句をつけてくる先生の事を冷めた目で接する一護の顔を見れるようになって、その違いが悲しかった。だから、きっとチャドと出会った事で一護にとって学校も少しはマシなトコになるだろうなって、そう思えたのが嬉しい。
学校で一番楽しい事って、勉強じゃなくて気の合う友達の存在だから。
今日は、そんなチャドに俺も始めて会えるという事で、楽しみにしていた休日だ。
玄関先に出てみると、ちょうどあっちも着いた時だったみたいで。
「っはよございます。俺はって言います、一護の弟です。今日は兄と一緒にお世話になります」
とりあえず、初対面だから敬語……で良いよな?歳もひとつ上だし。仲良くなったらタメ口でも良いかな。
「おはよう。俺は、茶渡泰虎だ」
おぉっ! まともに返事が返ってきた。
てっきり「……ム」とか言う返事になると思っていたんだけど。
まぁ、最初の自己紹介くらいは普通に話すか。
ささやかな感動を味わいながら、一護が少し……たぶん少し遅れる事を伝えて、それからポツポツと、ゆっくり話し始める。
好きな音楽の事とか、一護とチャドがどうやって出会ったとか……これは俺は知っているはずだけど、何しろ千余年は前に読んだ記憶だから、すでにあやふやな所もある。だから無理に思い出そうとするよりも、こうやって話しながら補完した方が良い。
話してわかる……伝わってくる事がある。
肌で感じるって言うのも変だけど、直接触れ合う中でわかる事って大事だし、チャドと話すのは楽しかった。
凄い無骨なんだけど優しい、予想通りの性格なのが嬉しい。
「悪い! チャド、、遅れてスマン!!!」
「やっと親父を撃退したのか」
「ったく冗談じゃねぇぜ。……っと、悪ぃなホント、紹介するって話してたのに先にふたりだけで合わせちまって」
「いや、チャドとは話が合ったから待った感じはしなかったよ」
「そうだな、そんなに待っていない。……それに、と話すのは楽しかった」
「そうか?それなら良かったけど……って、ぅわ…………」
俺とチャドを見遣った一護は、なんだか変な顔で呻いた。
「一護、どうした?」
「黒崎?」
首を傾げる俺達を、困ったように一護は見る。
「いや……、お前、私服でチャドと並ぶと不味い。すっげ女の子みたいに見えるぞ。身長や体格の差がありすぎて、制服着てないと男に見え難い」
「マジで……?」
「……」
顔立ちが夏梨と遊子の中間って感じの俺は、今までにも、ほんの時々だけど、女の子に間違われる事があった。
でも、ここ最近……中学生になってからは、学生服を着ているし、そんな勘違いはなくなってきてたんだけど。
……私服で並び立った時の身長や体格の差があると今でも不味いのか。
「……わかった、覚悟しとく」
俺は、重々しく頷いた。
「……覚悟?」
そんな俺の言葉に、チャドは首を傾げた。
一護が苦笑してそれに答える。
「あのな、今まで俺と一緒に遊びに行く時にも時々あった事なんだけど、を女の子だと勘違いする奴が居るんだよ。『』っていう名前も不味いしな。んで、は周囲から『女の子扱い』されるんだ。たぶん、今日は男ふたりと女の子ひとり組だと勘違いされるんじゃないか? だからその覚悟をしとくって事」
俺は軽く溜め息を吐いて、一護の言葉に補足説明を付け加える。
「勘違いされると、とっさに怒鳴っちまうんだよ、俺は男だ! って。でも、いちいち騒いでも仕方ねぇから、怒鳴らないように我慢しておかないと……って、そういう覚悟をしておくんだ」
『俺』は、生まれ変わる前は女だった。
けど、だからこそ、今の『私』は男なのだと強く意識して育ってきた。
それなのにそれを勘違いされると……この命を、否定されたようで少し切ない。
どうか、否定しないでくれ。
今の『俺』という存在は確かに此処に在る、『私』はその奇蹟のような現実に救われているのに。
チャドは俺と一護のやりとりを見て取って、何を思ったのか俺の頭に手を乗せて撫でてきた。
俺の事、慰めてくれてんの?
でっかい手で撫でられるのって気持ち良いなって思う。ずっと前から好きだった。……春水と十四郎も、優しく撫でてくれた大きな手だったと思い出す。
もう、何年あの手に触れてないんだろう。
再会したとしても、こんな姿じゃもう二度と撫でてくれないだろうけど……。
うわ、やばい、なんか泣きそう。
ぐっと我慢してチャドに撫でられるままになっていたら、もうひとりの手も伸びてきた。
「え? ちょっ?! 一護まで?! さすがに髪の毛がぐちゃぐちゃになるって!!!」
「良いだろ別に、したくなったからしてんだよ」
「……ム」
「うわわわわわっ」
ぐしゃぐしゃぐしゃ、と髪をかき乱して。
撫でていく手があたたかい。
「よっし、男前2割り増しだ」
一護とチャドが満足そうに手をはなす頃には、俺の髪は乱れまくっていただろうけど。
「どこが2割り増しなんだよ。あーあ……すっげハネてんだろーなぁ」
文句を言いながら、俺の顔は笑っていたと思う。
そんな風に、俺が笑えるまで撫でてくれた。
2人の気持ちが、有り難かった。
その日、俺達3人が遊びに出かけた先は、ごくごく普通の場所。
門限ありの中学生で、バイトだって当然していなくて、少ないお小遣いで行ける場所なんて限られてくる。
CDショップでそれぞれが好きな曲を話しながらオススメの物を紹介しあった後、昼食を一緒にとって、それからゲーセンに行ってお互いのお小遣いで都合のつくところまで遊ぶ。
それだけの事なんだけど、なんか、凄い楽しいのな。
ずっと、笑いっぱなしで一日過ごした。
やっぱりと言うか、ゲーセンでは女の子に間違えられたけど、勘違いした店員の兄さんが「カノジョに捕ってあげたら?」と言ってオススメしてくれたクレーンゲームの小鳥のぬいぐるみが、可愛いもの好きのチャドのピンポイントを突いたらしくて、この際だから「カノジョ」って事にしておいて、小鳥のぬいぐるみを堂々と捕ろうって話になった。
嫌な事だけじゃなくて、好い事もあるんだなって、思い直す。
男3人に見えてたら、小鳥のぬいぐるみをオススメされなかっただろう。
「チャド、ぬいぐるみ捕れて良かったな。一護はコレどーすんだ?」
門限が近付き帰宅する途中、俺の手には一護の戦利品のウサギのぬいぐるみがある。
チャドが小鳥をゲットしたら、「そっちの彼氏も何かとってあげなよ」と、はやし立てられた結果なんだけど。
「それはにやる。俺が持っていてもしょうがねぇだろ」
「……チャドにあげても良い?」
チャド、ウサギも好きかな?
「それは一護やのお金で捕ったものだろう。もらえない」
「そっか」
好き嫌い以前の問題があったか。
チャド、律儀だな……。
つか、さりげなく一護が傷ついたな、今。
躍起になってウサギを捕ろうとしたのに手持ちのお金が足りなくなって、俺のお小遣いを借りた事をまだ気にしてるのか。
「えぇっと、じゃあどうしよっか……遊子は喜びそうだけど、かといって夏梨に何もあげずに遊子だけにって訳にもいかないよ」
一応、俺も『お兄ちゃん』だから。
ふたりのどちらかを贔屓するような事は避けたい。
「だから、の物にしておけば良いって。んで、遊子と夏梨に好きな時に貸すって話しておけば良いだろ?」
「俺も、それで良いと思う」
「……そうか?」
それもちょっと違うような気がするんだけど。
2人に言われるまま、俺はウサギのぬいぐるみをもらう事にする。
記念品みたいなものだ。
血なまぐさい事のない平和な一日が、どれだけ貴重な事なのか、俺は知ってる。
一護が死神になるまであと少し。
こんな、喜びだけしかない一日もあったという証のように、ウサギのぬいぐるみは長く俺の部屋に鎮座する事となった。
親父と一護の愛情劇は暴力的に炸裂するし、遊子は忙しく食事を作りながらも家族全員と会話しようとするし、夏梨は一歩引いているように見えて実は家族の言動にめちゃくちゃ神経を使っている……そしてそのツッコミは痛烈だ。
その中で俺はゆったりと食事をするのが日課になっている。
一護みたいに親父とやり合う時もあったし、遊子の調理を手伝う事もあったけど、大体は夏梨の側に座ってゆったりと過ごす……平穏が一番だと思うのは、俺だけじゃないはずだ。
そんな風に朝を迎えるのは学校のある平日だけじゃなく、学校のない休日でも同じだった。
家業が開業医だってのも理由のひとつだけど、基本的に寝坊ができない家なのだ。
家族団欒が第一。
慣れてしまえばどうって事ないが、一護は高校生になったら夜更かしをし始めるし、そうなると辛いだろうなぁって思う。
一護はまだ、中学2年生だ。死神になっていない。
だけど確実に、その時は近付いていた。
「一護、俺はそろそろ出るぞ?」
「待てっ! まだ準備できてねぇ!」
まだ親父とやり合ってたのか?
「けど、チャドって人と待ち合わせしてんだろ?玄関の前でって。なら、とりあえず俺が玄関に出ておいた方が良いんじゃないか?」
ちょっと遅れるって説明できるし、ひとりきりで待たすのは悪い。
まぁ、あのチャドならひとりでも一護の事を待ちそうだけど……。
「……悪い、頼む」
「謝るなよ、どーせ親父のせいだろ。まぁ、あんまり待たすのも駄目だからな。早くしろよー」
「あぁ、なるべく早くする」
そう言った一護の背後には、すでに親父の影が忍んできている。
時間、かかりそうだなぁ……と俺は苦笑した。
一護が数日前に、チャドっていう友達が出来たと話してくれた時、俺は凄く嬉しかった。
俺と一護は年子だから、一護が中学に入って一年間、家の中の一護しか見れなかった。
一年遅れて俺も同じ中学に入学してから、学校内外での噂に上る『喧嘩の強い馬芝中の黒崎一護』の顔や、髪の色に文句をつけてくる先生の事を冷めた目で接する一護の顔を見れるようになって、その違いが悲しかった。だから、きっとチャドと出会った事で一護にとって学校も少しはマシなトコになるだろうなって、そう思えたのが嬉しい。
学校で一番楽しい事って、勉強じゃなくて気の合う友達の存在だから。
今日は、そんなチャドに俺も始めて会えるという事で、楽しみにしていた休日だ。
玄関先に出てみると、ちょうどあっちも着いた時だったみたいで。
「っはよございます。俺はって言います、一護の弟です。今日は兄と一緒にお世話になります」
とりあえず、初対面だから敬語……で良いよな?歳もひとつ上だし。仲良くなったらタメ口でも良いかな。
「おはよう。俺は、茶渡泰虎だ」
おぉっ! まともに返事が返ってきた。
てっきり「……ム」とか言う返事になると思っていたんだけど。
まぁ、最初の自己紹介くらいは普通に話すか。
ささやかな感動を味わいながら、一護が少し……たぶん少し遅れる事を伝えて、それからポツポツと、ゆっくり話し始める。
好きな音楽の事とか、一護とチャドがどうやって出会ったとか……これは俺は知っているはずだけど、何しろ千余年は前に読んだ記憶だから、すでにあやふやな所もある。だから無理に思い出そうとするよりも、こうやって話しながら補完した方が良い。
話してわかる……伝わってくる事がある。
肌で感じるって言うのも変だけど、直接触れ合う中でわかる事って大事だし、チャドと話すのは楽しかった。
凄い無骨なんだけど優しい、予想通りの性格なのが嬉しい。
「悪い! チャド、、遅れてスマン!!!」
「やっと親父を撃退したのか」
「ったく冗談じゃねぇぜ。……っと、悪ぃなホント、紹介するって話してたのに先にふたりだけで合わせちまって」
「いや、チャドとは話が合ったから待った感じはしなかったよ」
「そうだな、そんなに待っていない。……それに、と話すのは楽しかった」
「そうか?それなら良かったけど……って、ぅわ…………」
俺とチャドを見遣った一護は、なんだか変な顔で呻いた。
「一護、どうした?」
「黒崎?」
首を傾げる俺達を、困ったように一護は見る。
「いや……、お前、私服でチャドと並ぶと不味い。すっげ女の子みたいに見えるぞ。身長や体格の差がありすぎて、制服着てないと男に見え難い」
「マジで……?」
「……」
顔立ちが夏梨と遊子の中間って感じの俺は、今までにも、ほんの時々だけど、女の子に間違われる事があった。
でも、ここ最近……中学生になってからは、学生服を着ているし、そんな勘違いはなくなってきてたんだけど。
……私服で並び立った時の身長や体格の差があると今でも不味いのか。
「……わかった、覚悟しとく」
俺は、重々しく頷いた。
「……覚悟?」
そんな俺の言葉に、チャドは首を傾げた。
一護が苦笑してそれに答える。
「あのな、今まで俺と一緒に遊びに行く時にも時々あった事なんだけど、を女の子だと勘違いする奴が居るんだよ。『』っていう名前も不味いしな。んで、は周囲から『女の子扱い』されるんだ。たぶん、今日は男ふたりと女の子ひとり組だと勘違いされるんじゃないか? だからその覚悟をしとくって事」
俺は軽く溜め息を吐いて、一護の言葉に補足説明を付け加える。
「勘違いされると、とっさに怒鳴っちまうんだよ、俺は男だ! って。でも、いちいち騒いでも仕方ねぇから、怒鳴らないように我慢しておかないと……って、そういう覚悟をしておくんだ」
『俺』は、生まれ変わる前は女だった。
けど、だからこそ、今の『私』は男なのだと強く意識して育ってきた。
それなのにそれを勘違いされると……この命を、否定されたようで少し切ない。
どうか、否定しないでくれ。
今の『俺』という存在は確かに此処に在る、『私』はその奇蹟のような現実に救われているのに。
チャドは俺と一護のやりとりを見て取って、何を思ったのか俺の頭に手を乗せて撫でてきた。
俺の事、慰めてくれてんの?
でっかい手で撫でられるのって気持ち良いなって思う。ずっと前から好きだった。……春水と十四郎も、優しく撫でてくれた大きな手だったと思い出す。
もう、何年あの手に触れてないんだろう。
再会したとしても、こんな姿じゃもう二度と撫でてくれないだろうけど……。
うわ、やばい、なんか泣きそう。
ぐっと我慢してチャドに撫でられるままになっていたら、もうひとりの手も伸びてきた。
「え? ちょっ?! 一護まで?! さすがに髪の毛がぐちゃぐちゃになるって!!!」
「良いだろ別に、したくなったからしてんだよ」
「……ム」
「うわわわわわっ」
ぐしゃぐしゃぐしゃ、と髪をかき乱して。
撫でていく手があたたかい。
「よっし、男前2割り増しだ」
一護とチャドが満足そうに手をはなす頃には、俺の髪は乱れまくっていただろうけど。
「どこが2割り増しなんだよ。あーあ……すっげハネてんだろーなぁ」
文句を言いながら、俺の顔は笑っていたと思う。
そんな風に、俺が笑えるまで撫でてくれた。
2人の気持ちが、有り難かった。
その日、俺達3人が遊びに出かけた先は、ごくごく普通の場所。
門限ありの中学生で、バイトだって当然していなくて、少ないお小遣いで行ける場所なんて限られてくる。
CDショップでそれぞれが好きな曲を話しながらオススメの物を紹介しあった後、昼食を一緒にとって、それからゲーセンに行ってお互いのお小遣いで都合のつくところまで遊ぶ。
それだけの事なんだけど、なんか、凄い楽しいのな。
ずっと、笑いっぱなしで一日過ごした。
やっぱりと言うか、ゲーセンでは女の子に間違えられたけど、勘違いした店員の兄さんが「カノジョに捕ってあげたら?」と言ってオススメしてくれたクレーンゲームの小鳥のぬいぐるみが、可愛いもの好きのチャドのピンポイントを突いたらしくて、この際だから「カノジョ」って事にしておいて、小鳥のぬいぐるみを堂々と捕ろうって話になった。
嫌な事だけじゃなくて、好い事もあるんだなって、思い直す。
男3人に見えてたら、小鳥のぬいぐるみをオススメされなかっただろう。
「チャド、ぬいぐるみ捕れて良かったな。一護はコレどーすんだ?」
門限が近付き帰宅する途中、俺の手には一護の戦利品のウサギのぬいぐるみがある。
チャドが小鳥をゲットしたら、「そっちの彼氏も何かとってあげなよ」と、はやし立てられた結果なんだけど。
「それはにやる。俺が持っていてもしょうがねぇだろ」
「……チャドにあげても良い?」
チャド、ウサギも好きかな?
「それは一護やのお金で捕ったものだろう。もらえない」
「そっか」
好き嫌い以前の問題があったか。
チャド、律儀だな……。
つか、さりげなく一護が傷ついたな、今。
躍起になってウサギを捕ろうとしたのに手持ちのお金が足りなくなって、俺のお小遣いを借りた事をまだ気にしてるのか。
「えぇっと、じゃあどうしよっか……遊子は喜びそうだけど、かといって夏梨に何もあげずに遊子だけにって訳にもいかないよ」
一応、俺も『お兄ちゃん』だから。
ふたりのどちらかを贔屓するような事は避けたい。
「だから、の物にしておけば良いって。んで、遊子と夏梨に好きな時に貸すって話しておけば良いだろ?」
「俺も、それで良いと思う」
「……そうか?」
それもちょっと違うような気がするんだけど。
2人に言われるまま、俺はウサギのぬいぐるみをもらう事にする。
記念品みたいなものだ。
血なまぐさい事のない平和な一日が、どれだけ貴重な事なのか、俺は知ってる。
一護が死神になるまであと少し。
こんな、喜びだけしかない一日もあったという証のように、ウサギのぬいぐるみは長く俺の部屋に鎮座する事となった。
