番外編 BLEACH異世界トリップ夢シリーズ
カラーノイズ
その『うわさ』を聞いた時、あまりの事に口をぱかっと開けてしまった。
午前の隊務を終えて、お昼ご飯はひさびさに各隊合同の大食堂で取ろうと思った。
食堂に来てみたら海燕の顔を見かけて、ご飯一緒に食べよっか? と誘う。
その後、膳を持って向かい合った席に座って。
周囲の雑音の中で、最近、まことしやかに流れてる噂があるんスよ、と海燕が話し出して。
私の驚いた顔を見て取って、海燕は苦笑する。
「もしかして今まで知らなかったんスか、さん」
「知らなかったよ! というか、何でそんな事が『うわさ』になるの?」
ご飯をもぐもぐと食べながら、むぅっと唸る。
一番隊所属のと、八番隊隊長の京楽春水、十三番隊隊長の浮竹十四郎は、同期だと言う噂。
「いやだって、さんはウチの隊長や京楽隊長の事、名前で呼んでるし」
「私は大抵の人を名前で呼んでるよ?喜助とか、惣右介君とか 、海燕もそうでしょ」
実は山本総隊長の事も、隊務以外の場所では『重國さん』だ 。
「そうっスけど。その癖、隊務中のさんはきっちり席次付きで呼ぶじゃないスか。んで、京楽隊長が『他人行儀なのはイヤだ』って、いつもの軽いノリで騒ぎますよね。浮竹隊長はそういう事を言わないけど、やっぱり物足りなさそうなのバレバレだし。俺はいっその事、隊務中でも名前で呼んであげれば良いのにって思うんスけど」
「そんな、隊務中に呼び捨てなんて出来ないよ」
いくら親しくても、公式の場では階級の差が優先されるべきだ。
「えぇまぁ‥‥だから、それも在ってあの噂になったんじゃないすか?」
「‥‥何がだから?」
さっぱり判らない。
視線で問えば、ですからね、と言い添える。
「何であんなに親しくしているんだろう?って不思議に思った新入隊員が、古参の隊員に聞く訳ですよ。『あの御三方のご関係はどのようなものなんですか? 殿はどちらかのご内助なのでしょうか?』と」
「……うわ」
それはちょっと気恥ずかしい。
春水と十四郎のどちらかを選べなかったために、夫になる人です、妻になる人です、と言えない微妙な恋人関係を「三人」で築いて、ン百年と過ごした今でも、ヒトにその手の事を言われてしまうと頬が染まる感じがする。
コドモじゃないんだから、いつまでも初心な反応をするべきじゃないのに。
あんな良い男をふたりも捕まえてしまったんだなって、実感するたび。
恥ずかしくも、たまらなく幸せな気持ちになる。
「って、海燕、古参隊員は何て答えてるの?」
いくら幸せでも、おおっぴらに『三人で付き合ってます』と言うつもりはない。
それに、それを声高に周囲に言われるのも遠慮したい。
普通は一夫一妻だからこそ、規格外な関係は悪し様に言われやすいから。
私はともかく(何しろどちらかを選べなかったのは私だ)、春水や十四郎が悪く言われてしまうのは嫌だ。
「それはもちろん、当たり障りなく『同期』と答えてますよ、誰も彼も」
「あぁそうなんだ……待って、なら何で『うわさ』になるの?」
ちゃんと同期だと、言ってくれているのに。
本当の事を噂するなんて、無意味じゃない?
私が問いただすと、海燕は遠い目をした。
ん?
「……誰も聞いてからすぐには信じないんス。歳の差があるからって」
「……マジで?」
「マジっすよー。浮竹隊長は白髪なんで一見して歳より上に見えますけど、顔の造作はむしろ歳より若いじゃないですか、だからまぁ相殺して年相応ですよね。京楽隊長は所作が粋で男振 りもあって見た目もあんな感じなので、ウチの隊長より少し上に見えますよね。で、そのお二人が同期なのは結構有名スよね、斬魄刀の事もあって」
「まぁねー、ふたり同時に隊長になったから、その点でも有名だよね」
「そうなんスよ。だけどさんの場合、浮竹隊長より若く見えるし、京楽隊長と並ぶと割と歳の差があるように見えてますから……何度言葉を重ねてもダメっすね。すぐには信じてくれません。んで、信じ切れないまま『本当に同期なんじゃないか?』『いやまさか』という噂になると……」
「なるほど……」
あーなんか目の前がチカチカする。
ホントの事が信じられないってどうなのソレ。
遠い目をした海燕の気持ちが、ちょっとわかってしまった。
「でも詳しいね、海燕」
「あー……、聞かれた古参隊員のひとりっス、俺」
噂の元じゃない!!!
「海燕、何で食べ終わってるの」
「さんも食べ終えてるじゃないスか。それより何で七味唐辛子の瓶を握りしめてるんですか!」
「どばっとやりたい気分になったの」
「……俺ンとこにっスか」
私はにっこりと笑う。
その時、海燕の食後のお茶は、鮮やかな赤に染まった。
「八つ当たりさせてくれる優しい性格が好きだよ」
「……さんにはかなわないっスよ」
へらりと笑う、その顔や、笑い合える、ささやかな日常も好 きだなって思う。
海燕に八つ当たりさせてもらってスッキリした私は、午後の隊務もいつも通り終えて、山本総隊長にご挨拶してから退室する。
これから雨乾堂に行こうかな。
お昼に海燕の顔を見たのに、十四郎の顔を見れなかったから 、なんだか物足りない。
春水も誘って、一緒にご飯を食べて。
あの『うわさ』を肴に、ほんのりと酔ってみるのも楽しそう だ。
「そういえば、海燕に質問した新入隊員って誰なんだろう?」
ぽんっとかろやかに駆け出しながら、私は思いついて呟いた 。
午前の隊務を終えて、お昼ご飯はひさびさに各隊合同の大食堂で取ろうと思った。
食堂に来てみたら海燕の顔を見かけて、ご飯一緒に食べよっか? と誘う。
その後、膳を持って向かい合った席に座って。
周囲の雑音の中で、最近、まことしやかに流れてる噂があるんスよ、と海燕が話し出して。
私の驚いた顔を見て取って、海燕は苦笑する。
「もしかして今まで知らなかったんスか、さん」
「知らなかったよ! というか、何でそんな事が『うわさ』になるの?」
ご飯をもぐもぐと食べながら、むぅっと唸る。
一番隊所属のと、八番隊隊長の京楽春水、十三番隊隊長の浮竹十四郎は、同期だと言う噂。
「いやだって、さんはウチの隊長や京楽隊長の事、名前で呼んでるし」
「私は大抵の人を名前で呼んでるよ?喜助とか、惣右介君とか 、海燕もそうでしょ」
実は山本総隊長の事も、隊務以外の場所では『重國さん』だ 。
「そうっスけど。その癖、隊務中のさんはきっちり席次付きで呼ぶじゃないスか。んで、京楽隊長が『他人行儀なのはイヤだ』って、いつもの軽いノリで騒ぎますよね。浮竹隊長はそういう事を言わないけど、やっぱり物足りなさそうなのバレバレだし。俺はいっその事、隊務中でも名前で呼んであげれば良いのにって思うんスけど」
「そんな、隊務中に呼び捨てなんて出来ないよ」
いくら親しくても、公式の場では階級の差が優先されるべきだ。
「えぇまぁ‥‥だから、それも在ってあの噂になったんじゃないすか?」
「‥‥何がだから?」
さっぱり判らない。
視線で問えば、ですからね、と言い添える。
「何であんなに親しくしているんだろう?って不思議に思った新入隊員が、古参の隊員に聞く訳ですよ。『あの御三方のご関係はどのようなものなんですか? 殿はどちらかのご内助なのでしょうか?』と」
「……うわ」
それはちょっと気恥ずかしい。
春水と十四郎のどちらかを選べなかったために、夫になる人です、妻になる人です、と言えない微妙な恋人関係を「三人」で築いて、ン百年と過ごした今でも、ヒトにその手の事を言われてしまうと頬が染まる感じがする。
コドモじゃないんだから、いつまでも初心な反応をするべきじゃないのに。
あんな良い男をふたりも捕まえてしまったんだなって、実感するたび。
恥ずかしくも、たまらなく幸せな気持ちになる。
「って、海燕、古参隊員は何て答えてるの?」
いくら幸せでも、おおっぴらに『三人で付き合ってます』と言うつもりはない。
それに、それを声高に周囲に言われるのも遠慮したい。
普通は一夫一妻だからこそ、規格外な関係は悪し様に言われやすいから。
私はともかく(何しろどちらかを選べなかったのは私だ)、春水や十四郎が悪く言われてしまうのは嫌だ。
「それはもちろん、当たり障りなく『同期』と答えてますよ、誰も彼も」
「あぁそうなんだ……待って、なら何で『うわさ』になるの?」
ちゃんと同期だと、言ってくれているのに。
本当の事を噂するなんて、無意味じゃない?
私が問いただすと、海燕は遠い目をした。
ん?
「……誰も聞いてからすぐには信じないんス。歳の差があるからって」
「……マジで?」
「マジっすよー。浮竹隊長は白髪なんで一見して歳より上に見えますけど、顔の造作はむしろ歳より若いじゃないですか、だからまぁ相殺して年相応ですよね。京楽隊長は所作が粋で男振 りもあって見た目もあんな感じなので、ウチの隊長より少し上に見えますよね。で、そのお二人が同期なのは結構有名スよね、斬魄刀の事もあって」
「まぁねー、ふたり同時に隊長になったから、その点でも有名だよね」
「そうなんスよ。だけどさんの場合、浮竹隊長より若く見えるし、京楽隊長と並ぶと割と歳の差があるように見えてますから……何度言葉を重ねてもダメっすね。すぐには信じてくれません。んで、信じ切れないまま『本当に同期なんじゃないか?』『いやまさか』という噂になると……」
「なるほど……」
あーなんか目の前がチカチカする。
ホントの事が信じられないってどうなのソレ。
遠い目をした海燕の気持ちが、ちょっとわかってしまった。
「でも詳しいね、海燕」
「あー……、聞かれた古参隊員のひとりっス、俺」
噂の元じゃない!!!
「海燕、何で食べ終わってるの」
「さんも食べ終えてるじゃないスか。それより何で七味唐辛子の瓶を握りしめてるんですか!」
「どばっとやりたい気分になったの」
「……俺ンとこにっスか」
私はにっこりと笑う。
その時、海燕の食後のお茶は、鮮やかな赤に染まった。
「八つ当たりさせてくれる優しい性格が好きだよ」
「……さんにはかなわないっスよ」
へらりと笑う、その顔や、笑い合える、ささやかな日常も好 きだなって思う。
海燕に八つ当たりさせてもらってスッキリした私は、午後の隊務もいつも通り終えて、山本総隊長にご挨拶してから退室する。
これから雨乾堂に行こうかな。
お昼に海燕の顔を見たのに、十四郎の顔を見れなかったから 、なんだか物足りない。
春水も誘って、一緒にご飯を食べて。
あの『うわさ』を肴に、ほんのりと酔ってみるのも楽しそう だ。
「そういえば、海燕に質問した新入隊員って誰なんだろう?」
ぽんっとかろやかに駆け出しながら、私は思いついて呟いた 。
