番外編 BLEACH異世界トリップ夢シリーズ
秘密のままで
護廷十三隊十番隊隊長、が、隊長位に就いた時から空席にしていた己の副官の座に、この春に真央霊術院を卒業予定の子どもを推した事は、瀞霊廷に激震をもたらしたと言う。
「……その子どもって、俺の事か?」
「うん、冬獅郎の事だよ」
真央霊術院の卒業試験が7日後に迫った昼休み、俺は真央霊術院の周囲にある林の中へ行き、教師から聞かされた話の真偽を確かめるべく、天廷空羅を使ってに呼び掛ければ、隊長としての職務はどうしたんだ?と問いかけたくなるくらい早く、はすぐに俺の側に来た。
人気のない林の中で、二人きりになって問いただせば。
ほがらかに笑って答える、その声には屈託がない。
「冬獅郎が、私の副官になってくれるの楽しみにしてるんだ。だから隊首会で思わず他の隊長のみんなに言っちゃったの『冬獅郎は私の副官にする予定だから、他の隊に引き抜かないでね』って」
にこにこと、本当に嬉しそうには笑って話す。
に望まれるのは、悪い気がしない。
むしろ、嬉しい…と感じるが、それを晒すのは丸っきり子どものようで、眉間に力を入れて溜め息と共に誤魔化していく。
「それは職権乱用じゃねぇか……。大体、俺は、の隊に入隊したいとは言ったが、何も俺を副隊長にしなくても良いだろう」
「え? 冬獅郎、副隊長になりたくないの?」
「……とりあえず席官からだと思ってた」
出世など、実力があれば後でどうにでもなりそうだから、とにかく入隊することだけを考えていた。
「あぁ、そうか。でも、斬魄刀の具象化まで出来てて、卍解まであともう少しの実力なら、副隊長になれるでしょ? そうなると自動的に、私の隊しか空いてないし」
「……ずっと空席だったんだろう?」
「うん…、そうだね。ずっと空席にしてたよ」
俺に話しながら、冷汗を流していた教師の顔を思い出す。
十番隊の副隊長の座は、が隊長の座に就いてから空席のままで、現行の隊長・副隊長を倒してその座を奪う事もせず就く事のできる最高位の地位だから、今までにも何人もの猛者が名乗りを上げ、その度にが却下していたのだと。
だから、いつの間にか、『隊長は副官を置くつもりはないのだ』と、そういう風評ができていたのに。何の気紛れで、と嘆息していた。
けれど俺は、教師が知らぬ事を知る。
は俺が真央霊術院に入学する前から、俺が死神になるようにと願っていたこと。
それに。
「が、俺に、氷輪丸を渡したのは、こうなる事を見越してなのか…?」
思い出す。俺が、初めてと出会った時の事。
空の色がとても鮮やかだった日。
桃や、ばあちゃんみたいに屈託なく笑っている癖に、その瞳は凛と輝き、まっすぐに俺を見つめ、俺の何を見て取ったのか、どこか満足そうに息を吐いてから、艶のある唇が、誘うように声をかけてきた。
『この「斬魄刀」が、キミの事を探していたの』
そうして差し出された、氷輪丸。
あんたが、俺を探し求めてくれたのではないのかと、落胆した事は、きっと一生の秘密になるだろう。
今、副官に就く事を望まれて、どうしようもなく嬉しく感じている心も、告げる事はないだろう。
「そうだねぇ、氷輪丸と冬獅郎ならって、思っていたね」
「そうかよ」
「春水と七緒ちゃんや、十四郎と海燕みたいに、良い関係になりたいなぁって」
「……そうかよ」
シュンスイ、ジュウシロウ、と呼ぶ声だけが、いつも甘く響くのを聞いてきた。
周囲は俺を天才と呼ぶが、こんな時は、いっそ馬鹿になりたいと思う。それならきっと、気が付かずに過ごせたはずだ。
がそいつらと過ごしてきた時間の長さ。その中で育まれた感情は、堅牢な砦のようで、攻め込む隙は欠片もない。
俺の望みは、かなわない。
それならば、もう。
告げる事は、ないだろうが。
「なってやるよ。の副官に」
に望まれて、その背を護る、一振りの刃になるという誘惑に抗えず。
永遠と続く日常のような、溶けることのない、片恋を承知の上で。
その側に在ることを、望んでしまったのだ。
まるで革命前夜のように。
「……その子どもって、俺の事か?」
「うん、冬獅郎の事だよ」
真央霊術院の卒業試験が7日後に迫った昼休み、俺は真央霊術院の周囲にある林の中へ行き、教師から聞かされた話の真偽を確かめるべく、天廷空羅を使ってに呼び掛ければ、隊長としての職務はどうしたんだ?と問いかけたくなるくらい早く、はすぐに俺の側に来た。
人気のない林の中で、二人きりになって問いただせば。
ほがらかに笑って答える、その声には屈託がない。
「冬獅郎が、私の副官になってくれるの楽しみにしてるんだ。だから隊首会で思わず他の隊長のみんなに言っちゃったの『冬獅郎は私の副官にする予定だから、他の隊に引き抜かないでね』って」
にこにこと、本当に嬉しそうには笑って話す。
に望まれるのは、悪い気がしない。
むしろ、嬉しい…と感じるが、それを晒すのは丸っきり子どものようで、眉間に力を入れて溜め息と共に誤魔化していく。
「それは職権乱用じゃねぇか……。大体、俺は、の隊に入隊したいとは言ったが、何も俺を副隊長にしなくても良いだろう」
「え? 冬獅郎、副隊長になりたくないの?」
「……とりあえず席官からだと思ってた」
出世など、実力があれば後でどうにでもなりそうだから、とにかく入隊することだけを考えていた。
「あぁ、そうか。でも、斬魄刀の具象化まで出来てて、卍解まであともう少しの実力なら、副隊長になれるでしょ? そうなると自動的に、私の隊しか空いてないし」
「……ずっと空席だったんだろう?」
「うん…、そうだね。ずっと空席にしてたよ」
俺に話しながら、冷汗を流していた教師の顔を思い出す。
十番隊の副隊長の座は、が隊長の座に就いてから空席のままで、現行の隊長・副隊長を倒してその座を奪う事もせず就く事のできる最高位の地位だから、今までにも何人もの猛者が名乗りを上げ、その度にが却下していたのだと。
だから、いつの間にか、『隊長は副官を置くつもりはないのだ』と、そういう風評ができていたのに。何の気紛れで、と嘆息していた。
けれど俺は、教師が知らぬ事を知る。
は俺が真央霊術院に入学する前から、俺が死神になるようにと願っていたこと。
それに。
「が、俺に、氷輪丸を渡したのは、こうなる事を見越してなのか…?」
思い出す。俺が、初めてと出会った時の事。
空の色がとても鮮やかだった日。
桃や、ばあちゃんみたいに屈託なく笑っている癖に、その瞳は凛と輝き、まっすぐに俺を見つめ、俺の何を見て取ったのか、どこか満足そうに息を吐いてから、艶のある唇が、誘うように声をかけてきた。
『この「斬魄刀」が、キミの事を探していたの』
そうして差し出された、氷輪丸。
あんたが、俺を探し求めてくれたのではないのかと、落胆した事は、きっと一生の秘密になるだろう。
今、副官に就く事を望まれて、どうしようもなく嬉しく感じている心も、告げる事はないだろう。
「そうだねぇ、氷輪丸と冬獅郎ならって、思っていたね」
「そうかよ」
「春水と七緒ちゃんや、十四郎と海燕みたいに、良い関係になりたいなぁって」
「……そうかよ」
シュンスイ、ジュウシロウ、と呼ぶ声だけが、いつも甘く響くのを聞いてきた。
周囲は俺を天才と呼ぶが、こんな時は、いっそ馬鹿になりたいと思う。それならきっと、気が付かずに過ごせたはずだ。
がそいつらと過ごしてきた時間の長さ。その中で育まれた感情は、堅牢な砦のようで、攻め込む隙は欠片もない。
俺の望みは、かなわない。
それならば、もう。
告げる事は、ないだろうが。
「なってやるよ。の副官に」
に望まれて、その背を護る、一振りの刃になるという誘惑に抗えず。
永遠と続く日常のような、溶けることのない、片恋を承知の上で。
その側に在ることを、望んでしまったのだ。
まるで革命前夜のように。
